第18回大阪アジアン映画祭初日『風』上映・シンポジウム開催
第18回大阪アジアン映画祭が3月10日(金)から開幕し、初日に「チーム神戸女学院大学文学部英文学科」の学生が日本語字幕を制作した『風』 “HAWA” (2022年 メジバウル・ラフマン・シュモン監督作品) がシネ・リーブル梅田で上映されました。
監督の長編映画デビュー作である『風』は、一艘の漁船を舞台に繰り広げられるお話です。女人禁制の船に謎めいた女性が突然現れるところから、奇妙なできごとが起こり始め、漁船と漁師たちの運命が急展開していきます。
『風』は、これまでにチーム神戸女学院大学文学部英文学科が字幕を手掛けた映画の中では最も長い130分を超える作品で、バングラデシュの漁師たちの恐怖心やユーモアが観客に伝わるよう、限られた文字数で表現するのは大変でしたが、学生たちはやりがいを感じながら、この大仕事を成し遂げました。
会場はほぼ満席で、上映後には温かい拍手をいただくことができました。
映画館に足を運んでくださったみなさま、ありがとうございました。
3月12日(日)には、メジバウル・ラフマン・シュモン監督をお招きして、本学英文学科南出准教授の司会と逐次通訳によるオンラインシンポジウム「バングラデシュ映画に新『風』が吹く」が開催されました。監督の来日が叶わずオンライン開催となったのは残念でしたが、監督の映画への熱い想いをうかがうことができました。
監督は、この映画を今までにない方法で作りたいと、CGの力を借りず実際に沖合に出て船の上での撮影を試みました。周囲からは無理と言われ続けたものの、セント・マーティン島の漁師たちから船と撮影場所の提供や網の使い方の指導などの協力を得て実現。撮影にこぎつけるまでに2年を要し、2019年にようやくクランクアップ。ところが今度はコロナ禍に見舞われて編集作業も中断、2021年にようやく完成しました。各国の映画祭が中止となったため、予告編を作成したところ、その映像と音楽がSNSで話題となり、結果的にはバングラデシュでの上映時にはインドやアメリカでも公開が決まっており、まさに人から人に伝わり、人が育てた映画となりました。
ストーリーの推進力となるのは「女性の強さ」、謎の女性は船で生活する移動民「ベデ」という設定です。ベデのような移動する人々の存在は世界中にいながら現在では少なくなっているのが現状。映画のタイトル“HAWA”には、「風」という意味のほかに「失われていくもの」という意味が含まれています。
監督は「芸術の力は言葉や国境を越えて伝えられる。日本に行ったことがなくても私は日本の芸術が好き。同じように日本の人たちがバングラデシュ映画を日本で楽しんでくれたら嬉しい。」という言葉でシンポジウムを締めくくられました。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。