Interview
扉を開いた先に、
学ぶ喜びが待っている。
卒業生
Bさん
神戸女学院大学 文学部英文学科(現在の国際学部)へ入学を決めた理由は?
消えない思いを力に、長年の夢への扉を叩いて。
小学6年生の修学旅行で、京都で出会ったアメリカ人女性と、拙い英語で言葉を交わした体験。それが、私の「英語を学びたい」という原点でした。しかし当時は「女の子は気立てが良くて優しいことが一番大切」「娘に下宿はさせない」という両親の思いや社会の風潮もあり、憧れていた神戸女学院大学ではなく、自宅から通える短大の英文科に進学しました。卒業後は地元のメーカーに就職し、26歳で結婚を機に退職。2人の子供を育てながら、自宅で英語教室の仕事をしていました。
「大学に行きたかった」という思いは、短大を卒業した頃からずっとありましたが、母の介護などもあり、長らく心の奥にしまっていました。そんなある日、電車の中で神戸女学院大学のポスターに出会ったのです。「かつて勉強したくてもできなかった方、今からでも学びませんか」という言葉に、「私のことだ!」と、大学への強い思いが再び呼び覚まされました。
母を見送ってから落ち着いた後、神戸女学院大学への入学に向けて調べ始めました。そこで目に飛び込んできたのが、“Knock and the door will be opened to you.”というフレーズ。60歳を過ぎて大学に挑戦することには、少しためらいや不安がありました。でも、このフレーズが「ここまで諦めきれなかった思いを抱えたまま、悔いを残したくない」という気持ちの後押しをしてくれ、扉をノックする決意を固めたのです。
私の意志を受け止め、応援してくれた夫や子供たち、友人、英語教室の生徒さんや保護者の皆さまには、感謝してもしきれません。多くの方々に助けていただいて、長年の夢を叶えることができました。
大学生活はいかがでしたか?
知らなかった世界が、次々と広がっていく幸せな毎日。
入学した2020年は、ちょうどコロナ禍の始まりで、入学式もなく、最初の1年半はオンライン授業でした。パソコン操作に不慣れで、Zoomに入れず授業に参加できなかったり、重要な情報を逃したりと、初めは失敗の連続でした。在宅勤務の夫や自宅にいた娘、先生方の親身なご対応に助けられながら、少しずつ前に進みました。ワクチン接種の関係で、若い学生さんたちに少し遅れて通学できるようになったのは、2年生の前期の最終日。緊張して登校しましたが、先生も学生の皆さんも温かく迎えてくださり、胸がいっぱいになったのを覚えています。
授業はすべて楽しくて、知らなかった世界が次々と広がる毎日でした。幅広く学んだ中から、3年生で翻訳・児童文学の分野へ進み、卒業論文では先生に丁寧なご指導をいただきました。授業とは別で、映画の字幕制作プロジェクトに参加したのも大きな財産です。課題は多く、英語教室の仕事と家事との両立は大変でしたが、好きなことをしている幸せが大きく、周囲の支えもあって、苦に感じることはありませんでした。
神戸女学院大学には、「隣人を愛し、多様性を認め合う」精神が息づき、学生の皆さんにも浸透しているように感じました。本格的に通学し出してからは、皆さんと一緒に美しいお庭でピクニックをしたり、プレゼンテーションの準備に励んだりと、仲間と過ごす日々も宝物になりました。特に3年生の時に、サプライズで私の誕生日パーティーを開いてくれた時は、嬉しさのあまり涙がこぼれました。卒業旅行も、かけがえのない思い出です。
入学して実感したことや、ご自身の変化は?
「学ぶ喜び」を感じながら、より広く、より深く。
入学してから変わったと感じるのは、学びを通じて視野が広がり、物事をより深く考えるようになったことです。洋書をただ読むのではなく、著者の生い立ちや執筆当時の社会情勢まで学ぶので、文章に込められた意味を深く味わえるようになりました。映画の字幕制作の経験からは、洋画を見る際に「こう訳するのね」「自分ならこう表現したい」と思い巡らすなど、楽しみ方そのものが広がりました。
遠くで難民支援活動に携わっておられる方と、まさにその現地からのオンラインでお話ができたことは、ニュースで見聞きする出来事をより切実に受け止めるきっかけとなりました。かつてのような文字だけの教育ではなく、自分で考え、感じ、肌で国際感覚を養える授業のあり方が、当事者意識を与えてくれたのだと思います。また、社会人や母親としてのこれまでの経験が学びと重なる瞬間もあり、例えば言語学の授業で子供が言葉を覚えていく過程を学んだ時は、自身の子育てを思い出して理解がいっそう深まる場面も多くありました。
10代の頃の進学は、どこか敷かれたレールの上を歩くように学校に行っていた感覚がありましたが、今回は学びたくて自ら選んだ進学。この年齢で挑戦したからこそ得られる「学ぶ喜び」を、心から噛み締めることができたと思います。
大学を卒業されてからはどのように過ごされていますか?
果てのない学びの道を、楽しく、自分の歩幅で。
卒業してからも、学びと向き合う日々を続けています。先生方からは大学院への進学も勧めていただきましたが、夫との時間も大切にしたいという思いもあり、進学は見送りました。それでも、ありがたいことに大学とのご縁は続いていて、大学院の一部授業の聴講や、神戸女学院の同窓会の「めぐみ会」が主催する読書会に参加させていただいています。学生さんたちとも家族ぐるみで交流が続いており、我が家に遊びに来てくれたり、また、所属していた茶道部からも折に触れてお声がけいただいて、お茶室で心和むひとときを過ごしています。
個人的には、まだ英語版のない日本語の絵本の英語翻訳を楽しんでいます。翻訳活動は続けたいですし、卒業論文の中で書いた物語の続きの執筆や、映画の字幕制作にも取り組んでみたいと思っています。大学に入って、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあると再認識した今、学ぶことに終わりはなく、やりたいことは尽きません。これからも人との繋がりを大切にしながら、自分のペースで楽しく、時に貪欲に、いろんなことを学び続けていきたいです。
入学を検討している方へのメッセージ
自分の気持ちを大切に、一歩踏み出して。
授業についていけるだろうか…と、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。実際に私も、失敗して恥をかくこともたくさんありました。けれども、気にすることはありません。試行錯誤を重ねながら、努力して学ぶ過程にこそ意味があると思います。誰かと比べる必要もなく、一人の学生として、自分のできる限りを尽くすことが一番です。
神戸女学院大学は、個性を尊重しつつ、困った時にはそっと手を差し伸べてくださる温かい環境です。先生方は丁寧に応えてくださり、学生同士も自然に助け合えるので、年齢や背景を気にせずに学ぶことができます。そして、重要文化財の校舎や図書館、音楽学部の校舎からの調べ、四季折々の花に彩られたシェイクスピア・ガーデン…そのような環境に身を置いて学ぶ時間は、心も豊かにしてくれます。
もし「大学に行きたい」という思いがあるなら、どうかその気持ちを大切にしてください。恐れずに一歩踏み出せば、新しい扉が次々と開かれていきます。私自身、あの時勇気を出して、本当に良かったと思っています。